GMAT CRの基本
Critical Reasoning(CR)の解き方を学習するにあたり、必ず理解しておくべき基本的概念の一つにassumption(アサンプション)があります。
このページでは、
・アサンプションとは何か
・アサンプションの読み取り方
について説明しています。
1 アサンプションとは
アサンプションとは「隠れた前提」のことです。hidden premise, presuppositionとも呼ばれます。
アサンプションを正しく読み取れるようになれば、CRの多くの問題を楽に解けるようになります。CRにおいて大多数を占める設問のタイプは、assumption/weaken/supportの三種であり、このうちweaken/supportはアサンプションが分かれば簡単に解けるケースが多いからです。
1-1 Argumentについて
「隠れた前提」について学ぶ前に、argument(アーギュメント)を理解しておく必要があります。
アーギュメントとは主張のことです。ここで言う主張とは、「(誰かの)意見とその理由」を指します。CRの問題文の多くはアーギュメントを含んでいます。
アーギュメントは「前提(根拠)」と「結論」から成り立っています(以下「前提」で統一します)。
・前提=理由
・結論=意見(最終的に言いたいこと)
です。「XだからYだ」のXが前提、Yが結論です。前提はpremiseですからP、結論はconclusionなのでCと表記します。
単純な例を挙げてみましょう。
例1)「雨が降っているからタクシーに乗ろう」
P:雨が降っている
C:タクシーに乗る
ですね。
例2)「彼が成功しないのは、目先のことしか考えないからだ」
P:彼は目先のことしか考えない
C:彼は成功しない
例1とはPとCの順番が逆ですが、考え方は同じです。
例3)「Aさんは長身の男性が好きだから、Bさんのことが好きに違いない」
P:Aさんは長身の男性が好き
C:AさんはBさんが好きに違いない
例4)「実験は失敗だった。実験装置の使い方に習熟していなかったせいだろう」
P:実験装置をうまく使えなかった
C:実験に失敗した
例はこれくらいでいいでしょう。「理由と意見」を併せてアーギュメントと呼ぶということが分かればOKです。
1-2 隠れた前提について
隠れた前提(hidden premise=assumption)とは、前提と結論の間に存在するもう一つの前提のことです。
「隠れた」前提ですから直接文中には書かれていません。「XだからYである」という形のアーギュメントにおいて、前提(X)から結論(Y)を導く為に必要な条件がアサンプションです。
上の例1で考えてみましょう。
例1)「雨が降っているからタクシーに乗ろう」
P:雨が降っている
C:タクシーに乗る
「雨が降っている」から「タクシーに乗る」ということは、この話者にとって「降雨中はタクシーが都合がよい」ことになります。どう都合がよいのかは述べられていないので分かりませんが、「都合がよい」の一例として、「タクシーだと濡れないから」で考えてみましょう。
こうなります(Aがアサンプション)
P:雨が降っている
A:タクシーだと濡れずにすむ
C:タクシーに乗る
「雨が降っているからタクシーに乗ろう」という主張の中には、「タクシーだと濡れずにすむから」は書いてありませんが、PとCの間にはこれが存在していることになります。これが[隠れた前提=アサンプション]です。
2 アサンプションの考え方
最もシンプルに考えるなら、アサンプションとは「言い換え」です。上のそれぞれの例を言い換えてみましょう。
例1)「雨が降っているからタクシーに乗ろう」
→「雨が降っている時はタクシーが好都合」
例2)「彼が成功しないのは、目先のことしか考えないからだ」
→「先を考えないと失敗する」
例3)「Aさんは長身の男性が好きだから、Bさんのことが好きに違いない」
→「Bさんは長身の男性だ」
例4)「実験は失敗だった。実験装置の使い方に習熟していなかったせいだろう」
→「装置を使いこなせないとちゃんと実験できない」
難しいことは何もないと思いますが、別の例でもう少し細かく見てみます。
例5)「AさんはBさんが好きなので、今度のパーティーに参加するだろう」
これを言い換えれば、「今度のパーティーにBさんが来る」となります。
PとCに分ければ、
P:AさんはBさんが好きだ
C:Aさんは今度のパーティーに来る
となります。より分かり易く言えば、PはCの理由ですから、
P:AさんはBさんが好きだ
「だから」
C:Aさんは今度のパーティーに来る
だと考えて下さい。
この主張を論理的に成立させる(前提から結論を導く)ためには、「Bさんがパーティーに来る」が絶対に必要です。
P:AさんはBさんが好きだ
「そして」
A:Bさんは今度のパーティーに来る
「だから」
C:Aさんは今度のパーティーに来るだろう(結論)
という理屈ですね。
もし「Bさんが今度のパーティーに来ない」のであれば、
P:AさんはBさんが好きだ
「そして」
A:Bさんは今度のパーティーに来ない
「だから」
C:Aさんは今度のパーティーに来るだろう
となり、論理的には破綻してしまいます。この場合、PとCを「だから」でつなげることができません。
Bさんがパーティーに来ないのであれば、Aさんは「Bさんが好き」云々とは別の理由でパーティーに行くことが示唆され、「AさんはBさんが好き」は「Aさんがパーティーに行く」ことの根拠とはなりません。
3 絶対必要条件かどうか
上で述べたように、「アサンプションは何か?」と訊ねられれば、まずは単純に言い換えてみればよいのです。
しかし、言い換えらしきものが選択肢にいくつかある場合は、次のステップとして「絶対必要条件かどうか」を考えなければなりません。例3)で考えてみましょう。
例3)「Aさんは長身の男性が好きだから、Bさんのことが好きに違いない」
アサンプションはどれでしょう?
(A) Bさんは長身のイケメンだ
(B) Bさんは長身の男性だ
(C) Bさんはセレブだ
(D) Bさんは長身のエリート男子だ
(E) BさんもAさんが好きだ
(C)(E)は「長身の男性」という条件とは全く関係がないのですぐに消せるでしょう。
(A)(B)(D)は「長身+男性」という条件を含んでいますので、これらの中から最適なものを選ぶことになります。
正解は(B)です。例文中で「Bさんが好きに違いない」の根拠(理由)として述べられている条件は、「長身の男性が好き」です。アサンプションはこの条件のみ満たしていればよく、「イケメン」や「エリート」はここでは無関係な情報です。
分からない方は、次のそれぞれのケースが論理的に成立するかどうかを考えて下さい。
P:Aさんは長身の男性が好き
A:
(A') Bさんは長身のイケメンではないものの
(B') Bさんは長身の男性ではないものの
(D') Bさんは長身のエリートではないものの
C:AさんはBさんが好きだ
★選択肢(A'):成立します。「長身のイケメンではない」が意味するものは、「『長身かつイケメン』ではない」です。二つの条件を同時に満たしていないのであって、「Bさんは長身の非イケメン」または「Bさんは非長身のイケメン」の可能性が残っています。
「長身+男性」である可能性が残っている以上、上の主張は論理的に成立します。例えばこのような主張ができます。
P:Aさんは長身の男性が好き
A:Bさんは長身のブサメンだけど
C: AさんはBさんが好き
Pには顔の善し悪しという条件が含まれていないので、Bさんが「長身+男性」でさえあれば結論につなげることができます。
★選択肢(B'):成立しません。「長身男性が好き」→「Bさんは長身男性ではない」→「Bさんが好き」は支離滅裂です。
★選択肢(D'): (A)とほぼ同じです。「長身男性が好き」→「Bさんはエリートではないが長身男性だ」→「Bさんが好き」は成立します。
(B)を否定したものである(B')が不成立ということは、(B)はPとCをつなぐための絶対必要条件ということです。対して(A)(D)は成立するので、絶対必要条件ではありません。
よって、(B)=絶対必要条件=アサンプションです。
このように、アサンプションかどうかが判断しにくい場合には、「選択肢を否定したもの」をPとCの間に挿入し、論理が成立するかどうかを考えればよいのです。これをdenial test(デナイアルテスト)と言います。
4 Denial Test
デナイアルテストは下記の手順で行います。
①選択肢を否定する
②前提(P)→結論(C)の間に挿入する
③論理が成立しない→assumption
論理が成立する→assumptionではない
次の例を使ってデナイアルテストの練習をしてみましょう。
例6) 田中君は3年生だ。よって彼は模擬試験を受けたに違いない。
(A) 田中君は模擬試験を受けた唯一の3年生だ
(B) 全ての3年生が模擬試験を受けた
(C) 3年生だけが模擬試験を受けた
(D) 一部の3年生は、模擬試験を受けなかった
(E) 3年生は誰も模擬試験を受けなかった
まず、PとCに整理します。
P:田中君は3年生だ。
C:田中君は模擬試験を受けたに違いない
次に、各選択肢を否定します。
(A') 田中君は模擬試験を受けた唯一の3年生ではない
(B') 全ての3年生が模擬試験を受けたわけではない
(C') 3年生だけが模擬試験を受けたわけではない
(D') 模擬試験を受けなかった3年生はいない
(E') 模擬試験を受けた3年生もいる
それぞれをPとCの間に置きます。
P:田中君は3年生だ。
(そして)
A:
(A') 田中君は模擬試験を受けた唯一の3年生ではない
(B') 全ての3年生が模擬試験を受けたわけではない
(C') 3年生だけが模擬試験を受けたわけではない
(D') 模擬試験を受けなかった3年生はいない
(E') 模擬試験を受けた3年生もいる
(だから)
C:田中君は模擬試験を受けたに違いない
話がつながるかどうかをチェックしましょう。
(A')成立。「田中君は3年生」→「田中君以外の3年生も試験を受けた」→「田中君は受けたに違いない」は言えます。
(B')不成立。「田中君は3年生」→「3年生全員が試験を受けたわけではない」→「田中君は受けたに違いない」は破綻しています。3年生全員が受けてはいないのに、田中君が3年生であるという理由だけで「受けたに違いない」と言っていることになります。
(C')成立。「田中君は3年生」→「3年生だけが受けたわけではない」→「田中君は受けたに違いない」も言えます。3年生が受けていることに違いはなく、田中君は3年生ですから、「3年生だから受けただろう」は成り立ちます。
(D') 成立。「田中君は3年生」→「模擬試験を受けなかった3年生はいない」→「田中君は受けたに違いない」は当然の理屈ですね。3年生なら全員受けているのですから。
(E') 成立。「田中君は3年生」→「模擬試験を受けた3年生もいる」→「田中君は受けたに違いない」。模擬試験を受けた3年生の中に田中君が含まれている可能性はありますから、これも言えます。
(B')以外は全て成立可能ですからアサンプションではありません。よって(B)が正解です。
アサンプションの説明は以上です。
アサンプションを読み取ることはそれほど難しいことではありませんが、アーギュメントによってはいくつものアサンプションが考えられる場合がありますし、1つずつデナイアルテストをして確認するのは現実には難しい場合もあります。
ではどうすればよいか?という点ですが、心配は要りません。CRの問題文の殆どは、いくつかのアーギュメントタイプに分類でき、またそれぞれのタイプが類型的なアサンプションをもっています。
例えば、アーギュメントタイプAであればそのアサンプションはXであり、それをweakenするにはアンサータイプ1-3のどれかに該当するものを選択肢から探せばよい、という実に簡単な手順で正答に至ることができます。
CR問題は殆どがパターン化しています。問題文の読み方と要約の仕方、正答パターンを学習し、少し練習すれば、典型的な問題でしたら一分程度で解くことができるようになります。
具体的な解法を学ぶための大前提として、CRの基本中の基本であるアサンプションについて説明しました。しっかり理解しておいて下さい。
このページでは、
・アサンプションとは何か
・アサンプションの読み取り方
について説明しています。
1 アサンプションとは
アサンプションとは「隠れた前提」のことです。hidden premise, presuppositionとも呼ばれます。
アサンプションを正しく読み取れるようになれば、CRの多くの問題を楽に解けるようになります。CRにおいて大多数を占める設問のタイプは、assumption/weaken/supportの三種であり、このうちweaken/supportはアサンプションが分かれば簡単に解けるケースが多いからです。
1-1 Argumentについて
「隠れた前提」について学ぶ前に、argument(アーギュメント)を理解しておく必要があります。
アーギュメントとは主張のことです。ここで言う主張とは、「(誰かの)意見とその理由」を指します。CRの問題文の多くはアーギュメントを含んでいます。
アーギュメントは「前提(根拠)」と「結論」から成り立っています(以下「前提」で統一します)。
・前提=理由
・結論=意見(最終的に言いたいこと)
です。「XだからYだ」のXが前提、Yが結論です。前提はpremiseですからP、結論はconclusionなのでCと表記します。
単純な例を挙げてみましょう。
例1)「雨が降っているからタクシーに乗ろう」
P:雨が降っている
C:タクシーに乗る
ですね。
例2)「彼が成功しないのは、目先のことしか考えないからだ」
P:彼は目先のことしか考えない
C:彼は成功しない
例1とはPとCの順番が逆ですが、考え方は同じです。
例3)「Aさんは長身の男性が好きだから、Bさんのことが好きに違いない」
P:Aさんは長身の男性が好き
C:AさんはBさんが好きに違いない
例4)「実験は失敗だった。実験装置の使い方に習熟していなかったせいだろう」
P:実験装置をうまく使えなかった
C:実験に失敗した
例はこれくらいでいいでしょう。「理由と意見」を併せてアーギュメントと呼ぶということが分かればOKです。
1-2 隠れた前提について
隠れた前提(hidden premise=assumption)とは、前提と結論の間に存在するもう一つの前提のことです。
「隠れた」前提ですから直接文中には書かれていません。「XだからYである」という形のアーギュメントにおいて、前提(X)から結論(Y)を導く為に必要な条件がアサンプションです。
上の例1で考えてみましょう。
例1)「雨が降っているからタクシーに乗ろう」
P:雨が降っている
C:タクシーに乗る
「雨が降っている」から「タクシーに乗る」ということは、この話者にとって「降雨中はタクシーが都合がよい」ことになります。どう都合がよいのかは述べられていないので分かりませんが、「都合がよい」の一例として、「タクシーだと濡れないから」で考えてみましょう。
こうなります(Aがアサンプション)
P:雨が降っている
A:タクシーだと濡れずにすむ
C:タクシーに乗る
「雨が降っているからタクシーに乗ろう」という主張の中には、「タクシーだと濡れずにすむから」は書いてありませんが、PとCの間にはこれが存在していることになります。これが[隠れた前提=アサンプション]です。
2 アサンプションの考え方
最もシンプルに考えるなら、アサンプションとは「言い換え」です。上のそれぞれの例を言い換えてみましょう。
例1)「雨が降っているからタクシーに乗ろう」
→「雨が降っている時はタクシーが好都合」
例2)「彼が成功しないのは、目先のことしか考えないからだ」
→「先を考えないと失敗する」
例3)「Aさんは長身の男性が好きだから、Bさんのことが好きに違いない」
→「Bさんは長身の男性だ」
例4)「実験は失敗だった。実験装置の使い方に習熟していなかったせいだろう」
→「装置を使いこなせないとちゃんと実験できない」
難しいことは何もないと思いますが、別の例でもう少し細かく見てみます。
例5)「AさんはBさんが好きなので、今度のパーティーに参加するだろう」
これを言い換えれば、「今度のパーティーにBさんが来る」となります。
PとCに分ければ、
P:AさんはBさんが好きだ
C:Aさんは今度のパーティーに来る
となります。より分かり易く言えば、PはCの理由ですから、
P:AさんはBさんが好きだ
「だから」
C:Aさんは今度のパーティーに来る
だと考えて下さい。
この主張を論理的に成立させる(前提から結論を導く)ためには、「Bさんがパーティーに来る」が絶対に必要です。
P:AさんはBさんが好きだ
「そして」
A:Bさんは今度のパーティーに来る
「だから」
C:Aさんは今度のパーティーに来るだろう(結論)
という理屈ですね。
もし「Bさんが今度のパーティーに来ない」のであれば、
P:AさんはBさんが好きだ
「そして」
A:Bさんは今度のパーティーに来ない
「だから」
C:Aさんは今度のパーティーに来るだろう
となり、論理的には破綻してしまいます。この場合、PとCを「だから」でつなげることができません。
Bさんがパーティーに来ないのであれば、Aさんは「Bさんが好き」云々とは別の理由でパーティーに行くことが示唆され、「AさんはBさんが好き」は「Aさんがパーティーに行く」ことの根拠とはなりません。
3 絶対必要条件かどうか
上で述べたように、「アサンプションは何か?」と訊ねられれば、まずは単純に言い換えてみればよいのです。
しかし、言い換えらしきものが選択肢にいくつかある場合は、次のステップとして「絶対必要条件かどうか」を考えなければなりません。例3)で考えてみましょう。
例3)「Aさんは長身の男性が好きだから、Bさんのことが好きに違いない」
アサンプションはどれでしょう?
(A) Bさんは長身のイケメンだ
(B) Bさんは長身の男性だ
(C) Bさんはセレブだ
(D) Bさんは長身のエリート男子だ
(E) BさんもAさんが好きだ
(C)(E)は「長身の男性」という条件とは全く関係がないのですぐに消せるでしょう。
(A)(B)(D)は「長身+男性」という条件を含んでいますので、これらの中から最適なものを選ぶことになります。
正解は(B)です。例文中で「Bさんが好きに違いない」の根拠(理由)として述べられている条件は、「長身の男性が好き」です。アサンプションはこの条件のみ満たしていればよく、「イケメン」や「エリート」はここでは無関係な情報です。
分からない方は、次のそれぞれのケースが論理的に成立するかどうかを考えて下さい。
P:Aさんは長身の男性が好き
A:
(A') Bさんは長身のイケメンではないものの
(B') Bさんは長身の男性ではないものの
(D') Bさんは長身のエリートではないものの
C:AさんはBさんが好きだ
★選択肢(A'):成立します。「長身のイケメンではない」が意味するものは、「『長身かつイケメン』ではない」です。二つの条件を同時に満たしていないのであって、「Bさんは長身の非イケメン」または「Bさんは非長身のイケメン」の可能性が残っています。
「長身+男性」である可能性が残っている以上、上の主張は論理的に成立します。例えばこのような主張ができます。
P:Aさんは長身の男性が好き
A:Bさんは長身のブサメンだけど
C: AさんはBさんが好き
Pには顔の善し悪しという条件が含まれていないので、Bさんが「長身+男性」でさえあれば結論につなげることができます。
★選択肢(B'):成立しません。「長身男性が好き」→「Bさんは長身男性ではない」→「Bさんが好き」は支離滅裂です。
★選択肢(D'): (A)とほぼ同じです。「長身男性が好き」→「Bさんはエリートではないが長身男性だ」→「Bさんが好き」は成立します。
(B)を否定したものである(B')が不成立ということは、(B)はPとCをつなぐための絶対必要条件ということです。対して(A)(D)は成立するので、絶対必要条件ではありません。
よって、(B)=絶対必要条件=アサンプションです。
このように、アサンプションかどうかが判断しにくい場合には、「選択肢を否定したもの」をPとCの間に挿入し、論理が成立するかどうかを考えればよいのです。これをdenial test(デナイアルテスト)と言います。
4 Denial Test
デナイアルテストは下記の手順で行います。
①選択肢を否定する
②前提(P)→結論(C)の間に挿入する
③論理が成立しない→assumption
論理が成立する→assumptionではない
次の例を使ってデナイアルテストの練習をしてみましょう。
例6) 田中君は3年生だ。よって彼は模擬試験を受けたに違いない。
(A) 田中君は模擬試験を受けた唯一の3年生だ
(B) 全ての3年生が模擬試験を受けた
(C) 3年生だけが模擬試験を受けた
(D) 一部の3年生は、模擬試験を受けなかった
(E) 3年生は誰も模擬試験を受けなかった
まず、PとCに整理します。
P:田中君は3年生だ。
C:田中君は模擬試験を受けたに違いない
次に、各選択肢を否定します。
(A') 田中君は模擬試験を受けた唯一の3年生ではない
(B') 全ての3年生が模擬試験を受けたわけではない
(C') 3年生だけが模擬試験を受けたわけではない
(D') 模擬試験を受けなかった3年生はいない
(E') 模擬試験を受けた3年生もいる
それぞれをPとCの間に置きます。
P:田中君は3年生だ。
(そして)
A:
(A') 田中君は模擬試験を受けた唯一の3年生ではない
(B') 全ての3年生が模擬試験を受けたわけではない
(C') 3年生だけが模擬試験を受けたわけではない
(D') 模擬試験を受けなかった3年生はいない
(E') 模擬試験を受けた3年生もいる
(だから)
C:田中君は模擬試験を受けたに違いない
話がつながるかどうかをチェックしましょう。
(A')成立。「田中君は3年生」→「田中君以外の3年生も試験を受けた」→「田中君は受けたに違いない」は言えます。
(B')不成立。「田中君は3年生」→「3年生全員が試験を受けたわけではない」→「田中君は受けたに違いない」は破綻しています。3年生全員が受けてはいないのに、田中君が3年生であるという理由だけで「受けたに違いない」と言っていることになります。
(C')成立。「田中君は3年生」→「3年生だけが受けたわけではない」→「田中君は受けたに違いない」も言えます。3年生が受けていることに違いはなく、田中君は3年生ですから、「3年生だから受けただろう」は成り立ちます。
(D') 成立。「田中君は3年生」→「模擬試験を受けなかった3年生はいない」→「田中君は受けたに違いない」は当然の理屈ですね。3年生なら全員受けているのですから。
(E') 成立。「田中君は3年生」→「模擬試験を受けた3年生もいる」→「田中君は受けたに違いない」。模擬試験を受けた3年生の中に田中君が含まれている可能性はありますから、これも言えます。
(B')以外は全て成立可能ですからアサンプションではありません。よって(B)が正解です。
アサンプションの説明は以上です。
アサンプションを読み取ることはそれほど難しいことではありませんが、アーギュメントによってはいくつものアサンプションが考えられる場合がありますし、1つずつデナイアルテストをして確認するのは現実には難しい場合もあります。
ではどうすればよいか?という点ですが、心配は要りません。CRの問題文の殆どは、いくつかのアーギュメントタイプに分類でき、またそれぞれのタイプが類型的なアサンプションをもっています。
例えば、アーギュメントタイプAであればそのアサンプションはXであり、それをweakenするにはアンサータイプ1-3のどれかに該当するものを選択肢から探せばよい、という実に簡単な手順で正答に至ることができます。
CR問題は殆どがパターン化しています。問題文の読み方と要約の仕方、正答パターンを学習し、少し練習すれば、典型的な問題でしたら一分程度で解くことができるようになります。
具体的な解法を学ぶための大前提として、CRの基本中の基本であるアサンプションについて説明しました。しっかり理解しておいて下さい。